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矩形 夕暮れ時が近づくと，水平方向から差し込む日没近くの日の光が，築38年の官舎に影を映し出す． と同時に，「矩形」のエッジが際だって見える．  矩形． この建物には至る所に矩形の切り取り跡が見られる．  壁には四角形の凹みがたくさんついている． 初めて見たとき，いったい何のためにこのようなデザインになっているのか不思議に思った． どうもこの凹み，壁が削れ落ちた箇所を，それ以上被害が広がらないように広めに削り取った跡のようだ． おそらく剥がれ落ちた箇所を思い切って切除した跡だと推測されるのだが，そのイキサツに関しては正式な説明を受けたことが無いので不明である． 遠くからみるとそれほど大きな矩形ではないが，1階部分にできている矩形に近寄ってみると，本格的な深い彫り込みであることに気づく． 隣にも同時期に建てられた建物があるのだが，そちらにも至る所に矩形の切り取り跡が見られる． ここに色など塗ってみたら面白いのだが，そういった遊び心がお役所にあるわけもなく，日の入り時刻の早くなる冬が近づくと，夕刻の矩形エッジはますます際だってくるのである． ためしに矩形に色をぬってみた↓  どうもこれは公務員住宅だけに限ったものではないようで，近所の県営団地や公団住宅にも同様の切除跡がみられる．   「あばたもえくぼ」ということわざがあるが，建物ごとに異なるこの切除跡も個性ではある． ここまで削りとられまくると，住人もちょっと気になっているのではないだろうか． 民間の建物でこのような状態のものを見かけたことはない． |